  はかないこと
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ともやくんが死んでしまった。
洗濯用にバスタブに残してあった湯に落ちて
溺れたのだった。
わずか15cm程だったらしい。
昭和44年。
ボクが5才、ともやくんはまだ3才だった。
いつもなら掛っていた風呂場の鍵が
この日だけは掛っていなかった。
そんな些細なことで幼い命が奪われてしまった。
怒りを何所へ持って行けばいいのかわからない
大人たちの横顔が灯籠の明かりに照らされて
ぼんやりと見えていた。
啜り泣き、嗚咽、怒鳴り声。
幼い子供の死は大人を狂わせる。
告別式の日は雲一つ無かった。
ボクが生まれた町の火葬場は
レンガ造りの今にも朽ち果てそうな感じで
夜はもちろん、雨の日もそばを通るのが怖い程の
代物だったがこの時のそれは予想に反して
とてもきれいな建物だった。
とても白く感じた。
台に載せられた棺、読経、お焼香。
炉の扉が開かれた。
ちらっと中を覗き見た。
一番奥の壁には火口があった。
丁度、車のシガライターみたいだった。
その小さな暗い部屋に
更に小さな棺に入ったともやくんが入れられた。
重い扉が閉められ火が着けられた。
この時から今に至るまでシガライターを見る度に
ちょっとだけ思い出す。
1時間か2時間か待っている間外に出た。
微妙な空気にも泣くのにも飽きていた。
ふと見上げると真っ青な空に
大きな煙突からあがる煙りの横に
広告用の飛行船がポッカリ浮かんでいた。
最近は見なくなったが、ボクが子供の時は
セスナや飛行船が宣伝に使われる事が
珍しくはなかった。
とにかくキレイだった。
ともやくんはあっちを選んでしまったのだろうか。
あの日の青空と飛行船と煙りの白さは
小さな恐怖と寂しさを残していった。
ボクの中のリトマスの成分の1つを作った
事件だった。
イージー・ライダーをテレビで観たのは
その2年位後だった。
ショックだった。
でも悲しい出来事は映画やテレビの中だけでは無い事にも少しづつ気が付き始めていた。
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大久保ナオ登 :イラストレーター
1964年 岐阜県生まれ。
京都外国語大学中退、
1986年 東京デザイナー学院名古屋校卒。
第5回 ハンズ大賞入選。
第16回 愛知県優秀広告作品展入選
1996年 ARTBOX イラストファイルオーディション入選
1997年 9th Dimentional Illustrators Awards Show銅賞
1998年 10th Dimentional Illustrators Awards Show銅賞
1999年 11th Dimentional Illustrators Awards Show銅賞

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